古典読解において敬語はとても重要な文法の1つだ。
現代語でも使われているけれど、苦手な人は多いよね。敬語の種類と、主語との関係をしっかり押さえながら学習しようね。
- 敬語とは…誰かから誰かへの敬意を表す言葉のこと。主語のてがかりとなる。
- 尊敬語=動作の主体(主語)を高める言い方
- 謙譲語=動作の受け手(目的語)を高める言い方
- 丁寧語=読者や聞き手に対する丁寧な言い方
敬語って何?
そもそも敬語って何だろう。
敬語とは、誰かから誰かへの敬意を表す言葉のことだ。
現代語でいうなら、「いらっしゃる」とか「召し上がる」「参ります」といった言葉だったよね。
昔の日本は貴族社会だから、当然身分の差が人々の生活の基本となっていて、古文の中にもたくさんの敬語が使われている。
敬語は避けて通れないものなんだけど、この敬語をマスターしておくと、本文の中でその動作の主(主語)はいったい誰なのか、すぐ判別がつくようになるよ。
主語と敬語は切っても切れない関係なんだね。
また、敬語には①本動詞と②補助動詞がある。詳しく説明しよう。
① 本動詞=動詞事自体に敬語の意味が含まれているもの。
【例】
給ふ(お与えになる)
思す(お思いになる)
②補助動詞=動詞の連用形に接続して敬語の意味を付け足すもの
【例】
~給ふ(お~になる)
~奉る(~申し上げる)
~侍り(~です)
尊敬語をマスターしよう
では、3つの敬語についてそれぞれ詳しく見てみよう。
まずは尊敬語からだね。
尊敬語とは、その動作の主体(主語)を高める言い方なんだ。
つまり、身分の高い人の動作を表す言葉を言い換えて使うんだよ。
自分より身分の高い人の動作はすべて尊敬語を使って表現されていると覚えておこう!
【例】
かぐや姫、いといたく泣きたまふ。
(かぐや姫はひどくお泣きになる。)
この文の主語はかぐや姫だよね。
かぐや姫=泣いているという文の関係が成り立っているんだよ。
かぐや姫という身分の高いお姫様の動作を表している動詞に尊敬語をくっつけているんだ。
《よく出てくる尊敬語》
① 本動詞
- 給ふ=お与えになる
- おはす=いらっしゃる
- おぼす=お思いになる
- 大殿こもる=お休みになる
② 補助動詞
- ~給ふ=お~になる
- ~おはす/おはします=~していらっしゃる
謙譲語をマスターしよう
謙譲語とは動作の受け手(目的語)を高める敬語のことだよ。
つまり、自分の動作につけて相手を高める表現なんだ。
【例】
(翁が)かぐや姫を養ひたてまつること
(翁がかぐや姫をお育て申し上げる)
この文の主語は翁。かぐや姫は目的語だよね。
だから、身分の低い翁(主語)の動作に謙譲語をくっつけることによって、身分の高いかぐや姫を高めているんだよ。
《よく出てくる謙譲語》
① 本動詞
- つかうまつる=お仕え申し上げる
- 参る=参上する
- 罷る=退出する
② 補助動詞
- ~奉る=~申し上げる
- ~きこゆ=~申し上げる
- ~申す=~申し上げる
丁寧語をマスターしよう
尊敬語と謙譲語がどちらとも身分の高い人を高める表現だったのに対して、丁寧語はちょっと違うんだ。
丁寧語とは、読者や聞き手に対して丁寧に表現する言い方なんだ。
現代文で言いうと、「です」「ます」と同じ感覚だね。
丁寧語は「侍り」「候ふ」の2つだけなんだよ。訳し方は「~です」「~ます」。
簡単だね!
最高敬語(二重尊敬)をマスターしよう
最高敬語(二重尊敬)とは、古文独特の特別な敬語の1つだよ。
その名の通り、尊敬語+尊敬語の形の敬語のことだ。
これは次の3つのパターンがあるよ。
① 「す・さす・しむ(尊敬の助動詞)」+「たまふ」→せたまふ・させたまふ・しめたまふ
② 尊敬の動詞+「る・らる(尊敬の助動詞)」→思さる・仰せらる
③ 二重尊敬の尊敬語→まします・おはします・思しめす
これらは、天皇・中宮(天皇のお后の中で一番身分が高い人)・皇太子など「最高に身分が高い人」につかわれる言葉だよ。
絶対敬語をマスターしよう
古文独特の特別な敬語その2である絶対敬語。
これは、動作の受け手が必ず、絶対的な権力を持つ人物=天皇・中宮・皇太子などである謙譲語のことだ。
これは次の2つがある。
① 奏す =申し上げる 天皇に対してしか用いない。
② 啓す =申し上げる 中宮・皇太子に対して用いる。
誰から誰への敬意なのか判別しよう
敬語があったら、必ず誰かから誰かへ対する敬意を払っていることになるんだ。これを問われる問題が多いからしっかりマスターしようね。
考え方としてはまず「誰から」の敬意なのか。
これはどんな本文でも同じ決まりがあるんだよ。その敬語が使われている分を次の2つに分けるんだ。
- 地の文
- 会話文
会話文は「」で囲われている文、地の文とはそれ以外の文のことだ。
この2つの違いで「誰かから」の敬意かわかるんだ。
① 地の文 →作者から
【例】 かぐや姫、いといたく泣きたまふ。
作者からかぐや姫への敬意
② 会話文 →話し手から(その会話の主)
【例】「かの白く咲ける(花)をなむ、夕顔と申しはべる」(付き人が光源氏にむかって話しているシーン)
付き人から光源氏への敬意
「誰か」からの敬意を判別したら、あとは使われている敬語の種類や主語・目的語から判別して「誰に対する」敬意なのか考えようね。
この地の文の「作者から」というのは古文独特の考え方だから注意だよ。
練習問題にチャレンジしよう
傍線部の敬語の種類と誰から誰への敬意か答えなさい。
① 帝、御衣ぬぎて、たまふ。
②(中宮のところに)中納言、参り たまひて
③(かぐや姫に)天の羽衣うち着せたてまつりぬ。
④(中宮様は)白き御衣どもに、紅の唐綾をぞ上にたてまつりたる。
まとめ
敬語の用法は理解できたかな?古文独特の言い回しになれることが大切だ。決まりをしっかり覚えたら簡単だよ。頑張ろう!
- 敬語とは…誰かから誰かへの敬意を表す言葉のこと。主語のてがかりとなる。
- 敬語には①本動詞と②補助動詞がある。
- 本動詞=動詞事態に敬語の意味が含まれているもの。
- 補助動詞=動詞の連用形に接続して敬語の意味を付け足すもの
- 尊敬語=動作の主体(主語)を高める言い方
- 謙譲語=動作の受け手(目的語)を高める言い方
- 丁寧語=読者や聞き手に対する丁寧な言い方「侍り」「候ふ」の2つ
- 最高敬語(二重尊敬)=尊敬語+尊敬語の形の敬語。①「す・さす・しむ(尊敬の助動詞)」+「たまふ」②尊敬の動詞+「る・らる(尊敬の助動詞)」③二重尊敬の尊敬語の3つのパターンがある。
- 絶対敬語=動作の受け手が必ず、絶対的な権力を持つ人物=天皇・中宮・皇太子などである謙譲語のこと奏す=天皇に対してしか用いない。「啓す」=中宮・皇太子に対して用いる。
- 誰から誰への敬意か。地の文=作者から。会話文=話し手から。